塩の歴史

「塩」の世界史 マーク・カーランスキー  扶桑社

盆休みということで、普段あまり読まない傾向の本を読んでみている。読み始めると意外に面白かった。一度は聞いたり習ったりしている歴史の転換点には塩がなんらかの形で関わっている様に思えるようになってくる。

ローマ帝国と塩、フランスの絶対王政と塩税、スペインの南米植民地支配と製塩所。北米のタラの漁場と塩。南北戦争時の北軍による南部の製塩所の破壊。古代中国の塩鉄会議。産業革命以前の世界で保存料としての塩が及ぼす影響力は、いろんな産地の塩がよりどりみどりで手に入る現代の社会とは大きく違う。魚や肉はとれるが、それを消費地に送るために塩漬けにしないとならず、塩が足りないと商品にならない。というのは言われるとなるほど、となるのだが、考えたことがなかったので新鮮だった。

そして塩を海水から効率よく取り出すために燃料が必要だったので森林あるいは泥炭が燃やされてきた。産業革命以前の公害の歴史でもあった。

日本では1970年代にイオン交換膜式の製塩方法が確立するまでは、海水の天日干しという手間隙がかかる方法しかなかったし、塩専売制度が廃止されたのは1997年で最近のことだ。太平洋戦争中は塩も配給制だった。

盛塩や浄めの塩というのは、今の感覚よりも数倍くらい、貴重なものを使っている意識だったのだろうな、と考えてみるのも面白い。

ちなみに現代の日本はどうなっているのかとネット上で調べてみると世界有数の塩の輸入国。食用は辛うじて自給出来そうだがソーダ工業用についてほぼ輸入に頼っている。ソーダ工業というのは基礎素材産業であり塩がソーダ工業を通して各種産業で使われる様々な(14000種とも)形態に変化する。その原材料の塩がほぼ100%輸入品。

少し調べた程度でも随分と塩に囲まれた生活をしていて、身体の生存だけでなく、社会に必要不可欠なものになっている度合いが想像以上だった。自分には全く欠けていた視点だったので手に取ってみて良かった本だった。

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