一人見知らぬ町で一箇所に留まってしばらく過ごすのが好きだった。宿はユースやバックパッカーの口コミで知った小さな宿でドミトリ形式なことがほとんどだった。同宿者と仲良くなることもあれば、町自体となにか肌が合わずついた翌日に移動を決めることもあった。
いまは気軽に旅に出られる状況ではなくなってしまったけれど、自己隔離中という期間は、とても一人旅に似ている。移動はできないのだけれども、この町にしばらくいる、と決めた後でたまにやってくる、一人で持て余す時間が生じることと、それに嫌でも向き合う必要があるのがとても懐かしい。
旅先でそうなった時は本を読むのにも写真を見るのにも疲れて、常に持ち歩いているサーモスにお茶を詰めて、近くのブラッスリや屋台で温かい摘めるものを買って、公園か海辺に行ってぼーっと過ごすことが多かった。一応kindleだけは持っていくがだいたい放置されている。
カメラを持っていない、そういう時の海の色、木陰で感じる光、夕陽のグラデーション、ストリートミュージシャンのlet it beの音色だとかの方が時間が経ってからもよく身体に染みついている。
その時は一体全体何をやっているのだろう、と思っていることが多い。でも外に出て何もない空や海を眺めることは私にとっては丁度良い自分のリセット時間だったのだと思うし、案外その空白の時間が欲しくて日本語の聞こえないところまで行っていたような気がする。