竣工当時から行ってみたかった美術館。そう遠くもないしいつか行こう、だったが行けるうちに見ておこう。と思い立って行ってきた。
朝一番で入館すると水滴がぽつぽつと浮き出しては離合集散している。しばらくすると大きめの水たまりが見えてきてそこに吸収されていく様から目が離せなくなる。
蟻が水滴に巻き込まれ、でもなんとか床にしがみ付いて難を逃れたり。
同じくらいのサイズの水滴がくっついて倍のサイズになったり、大きな水滴が水たまりに勢いよく流れくだる時に小さな水滴が分離して取り残されたり。
ただ水流が水たまりに、水滴が水流に合流するだけなのに、その瞬間がとても心地よい。
撥水加工の床のため、程よく表面張力で丸みと張りを帯びた水滴が水溜りにぶつかり溶けて消え去る瞬間の水たまりの揺らぎ。
水流が勢いよく水たまりに突っ込んで、最後の一滴が溶け込むように消えていく間際に生じる全体の震え。
水滴は空を映し玉虫のような背を見せてゆっくりと進んでいく。その合間を銀の蛇のような水流が駆け抜けていく。
見慣れた水溜まりでありながら、精子と卵子のようにも見えてくる。であればコンクリートのシェルは子宮か。
白一色の躯体と覗く青空と吹き抜ける風。時折落ちる鳶の影。ゆっくりとうつろう光と影。
水も光も空気もいつも身近にあるが、それをシンプルにミニマムに可視化をしたら、こんなに気持ちが良いものか、と実感した体験になった。
写真撮影が不可なことを納得するとともに、撮れないことがとても悔しい素敵な空間だった。
昔、映像で見た時よりも植栽が随分馴染んで敷地全体で雰囲気を醸し出すように変化していた。季節や違う天気の日、また見てみたい。